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コラム Column

日本酒唎酒師あやかが日本酒を語る

伊藤彩夏

お米で飲み比べ

先日Shin’s La Jollaで開催された日本酒テイスティングイベントに参加してきました。4種類の日本酒テイスティングパッケージがあり、その中でも面白かったのが「酒造好適米別飲み比べ」です。

食用米にも色々な種類があるように、日本酒造りに適している酒造好適米にも様々な品種が存在します。代表的な酒米だと、山田錦、五百万石、雄町、美山錦などがあげられ、芳醇でコクのある日本酒を醸すものから、淡麗でキレのある日本酒を醸すものまで品種によって様々な特徴があります。

代表的なお米の特徴を知っていても、なかなか全く同じスペックで、純粋にお米の違いだけを飲み比べるというチャンスは少ないので、とても良い体験になりました。

今回フィーチャーされていた日本酒は、静岡県三和酒造さんの臥竜梅(がりゅうばい)で、写真は右からこの4種類です。

右から
臥龍梅 純米吟醸 誉富士 無濾過生貯原酒

臥竜梅 純米吟醸 五百万石 無濾過生貯原酒

臥龍梅 純米吟醸 山田錦 無濾過生貯原酒

臥竜梅 純米酒 (五百万石)

純米吟醸 無濾過生貯蔵原酒と聞くと、とても難しく聞こえるので、少しかみくだいて説明して行きたいと思います。

まず純米吟醸とは、原材料が米、水、麹、酵母のみので、精米歩合が60%以下のアルコール添加をしていない純米系の日本酒の名称です。純米酒は同じく米、水、麹、酵母のみの純米系の日本酒ですが、精米歩合に規定がありません。今回の臥竜梅の場合、純米吟醸は55%精米、純米は60%精米となっていました。

次に無濾過とは、日本酒を搾った後に、日本酒の色を透明にし、香味を調整する「濾過」作業を行わないことです。写真では少し分かりにくいですが、光にかざしてみると無色透明ではなく、薄く黄金色がかった色合いとなっていました。

通常の日本酒造りでは、日本酒を搾った後と瓶詰め前に2回火入れをします。生貯蔵とは、圧搾後の火入れをせず、生のまま貯蔵して瓶詰め前に1度だけ火入れをしている日本酒です。そうすることで、生酒とまではいきませんが爽やかで甘みを帯びた酸味を感じることができます。

最後に原酒というのは、日本酒のアルコールを調整するための割水をしていないお酒のことです。

また「誉富士」は、8年という歳月をかけ酒米の王様「山田錦」を改良して開発された静岡県のオリジナル酒造好適米で、誉富士を100%使用した清酒には特別なシンボルマークが貼ってあり、もちろん臥竜梅にもついていました。静岡のお酒を飲む際には、このシンボルを探してみるのも面白いかもしれないですね。



飲み比べをする場合、淡麗なものから芳醇なものへ順に飲み比べることをお勧めします。なので、今回は、純米酒(五百万石)→五百万石→誉富士→山田錦の順で試飲をしました。

臥竜梅 純米酒 (五百万石)

4つの中で1番お米の旨味が感じられ、甘さや酸味は控えめで余韻も短くキレのあるスッキリとした味わい。

臥竜梅 純米吟醸 五百万石 無濾過生貯原酒

誉富士と山田錦に比べて少し控えめな吟醸香で、五百万石らしいスッキリとしたあと味でしたが、最初の飲み口は、ふわっとした甘みが感じられる優しい味わいでした。

臥龍梅 純米吟醸 誉富士 無濾過生貯原酒

複雑な香りと旨み。この独特な複雑さは品格のある味わいで、石川県福光屋さんの「山田錦」と幻の酒米「金紋錦」を掛け合わせて醸された 加賀鳶 純米吟醸を思い出させる日本酒でした。

臥龍梅 純米吟醸 山田錦 無濾過生貯原酒

山田錦の特長を生かした、ふくよかでまろやかな味わいながらも、とてもフルーティで白桃のような、パイナップルのような甘い酸味を含んでいる。

同じスペックでも、お米が違うだけでこんなにも風味や香り、飲み口まで変わるのか!というのがとてもよく分かるペアリングとなり、とても勉強になりました。

2017.1.26

唎酒師 伊藤彩夏



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