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コラム Column

ココロのハナシ~カリフォルニア州公認心理カウンセラーから学ぶ正しい心理学

荒川龍也

荒川龍也

カテゴリー:健康
2790 Skypark Dr. Suite 102 Torrance CA 90505
TEL: 424-254-8823

ミステリと言う勿れ(なかれ)からみる日本の精神医療の遅れ

こんにちは、カリフォルニア州公認心理カウンセラーの荒川龍也です。

 

前クールのドラマ「ミステリと言う勿れ」は、私にとって非常に見ごたえのあるドラマでした。なぜなら、心の病やそれに関する事が扱われていたからです。残念ながらこのドラマもまた、日本の精神医療の遅れを如実に表しています。一つ一つ見ていきましょう。(注:ドラマのネタバレがありますので、これから見る予定がある方はここでこのコラムを読むのを止める事をお勧めいたします)

 

虐待されている子どもの親を他者が殺めることしかできない社会

 

ドラマの中で扱われたケースの一つに、虐待されている子どもの親を火事に見せかけて殺め、子どもを助けてあげるキャラクターがいます。これもまた、日本の悲しい現実を的確に表現しています。

 

ここ数年、救われるべき子どもが児童相談所のミスで救われず、親の虐待が原因で死に至ってしまうケースが何度も何度もニュースになっています。これは自称心理カウンセラーが蔓延り、正しい教育を受け正しいトレーニングを受けた心の専門家が日本には非常に少ない事が原因です。その結果、児童相談所で働く人たちも心の専門家ではないので、子どもの心にとって的確な判断を期待できません。それが何度も起こってしまう子どもの死という悲劇に繋がってしまいます。そもそも、心の専門家は日本に以前からいなかったので、このような事件は最近明るみになっただけで、実際はかなり昔から存在していたと考えるべきでしょう。

 

最近では「親ガチャ」という言葉が生まれるほど、虐待をする親の元に産まれたら、そこで人生終わりという論調が常識となってしまっています。(親ガチャとは、子どもは親を選べず、産みの親とその家庭環境によって人生を大きく左右されてしまう事を意味します)アメリカの児童相談所のシステムも決して完璧とは言い難いですが、それでも多くの面で機能している事は事実です。家庭がうまく機能していない場合は社会が介入し助けを差し出すべきなのですが、日本ではそれがうまく機能していません。その結果、ドラマで描かれたように、加害者自体を殺めること以外に選択肢は無いと思ってしまう被害者は多数存在するでしょう。

 

また、ドラマでは、火事で殺めてしまう側もまた虐待の被害者である事が描かれていました。この加害者の場合は、自分の親が火事に見せかけられて殺されたことで自分が救われたと考え、同じように苦しむ子どもを救いたい気持ちで加害者になったとの事でした。しかし、ドラマで描かれているように、虐待による心の傷は正しい心理カウンセリングを正しい教育とトレーニングを受けた心理カウンセラーから受けなければ、傷は癒えないのです。この加害者もまた、日本の精神医療の遅れの被害者と言えるでしょう。

 

 

解離性同一性障害を入院させ続ける現実

 

ドラマに出てくるキャラクターの一人に解離性同一性障害を患っている設定の人がいました。解離性同一性障害とは昔は多重人格や二重人格と言われていた、立派な心の病です。このキャラクターの描かれ方で、心の専門家として一番問題だと思うのは、彼女が長期的に入院させられている事です。精神医療先進国である欧米では、精神疾患者の長期入院はかなり昔に廃止され、彼らがどのようにコミュニティーの中で生きていく事を医療従事者が助けられるか、という方針に変わっています。その結果、精神病院に入院させられたとしても、精神疾患者が長期入院を強いられることなく、退院後に必要なケアを受けながらコミュニティーに戻ることができています。

 

しかし、日本の場合、ドラマで描かれたように、このような過去の精神医療の過ちが未だに平然と行われております。その結果、入院させられなくてもいい患者さんさえも長期入院強いられてしまう事は珍しくありません。つまり、このキャラクターも日本の精神医療の遅れの被害者なのです。

 

DVで苦しむ女性の逃げ場がない現実

 

最後に、ドラマでは夫からのDV(家庭内暴力)で苦しむ女性、その子ども、その女性の親友が描かれていました。DVから子どもを守るため、親友が子どもを育て上げます。しかし、肝心のDV被害者である子どもの母親は、心の病を患ってしまいます。また、DV加害者は母親とその親友に殺される事になります。

 

日本は男尊女卑が未だに強く残っているため、女性が男性に物のように扱われてしまう事も珍しくありません。もちろん、女性は物であるはずもないので、時には男性の思うように動かない時もあるでしょう。当然の事なのですが、男尊女卑の文化ではそれが許されず、男性がそれに腹を立てると暴力を振るう事が未だに現実として存在します。

 

DVも虐待と同じように、社会が積極的に介入していかなくてはいけないのですが、日本では正しい教育とトレーニングを受け正しい専門知識を持った心の専門家が少ないため、ドラマのようにDVがあっても救われない家庭は数多く存在する事でしょう。また、DVの加害者から逃げられたとしても、結局その後のアフターケアー(DVを受けたことによるトラウマ等の精神医療)も日本では期待できません。つまり、ここに出てくるキャラクターもやはり日本の精神医療の遅れの被害者なのです。

 

 

以上、日本の精神医療の遅れについてでした。

 

日本のメンタルヘルス医療の遅れに関してはこちらをご覧ください。

 

荒川龍也, M.S., LMFT #82425(カリフォルニア州公認心理カウンセラー)

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