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コラム Column

心のサプリメント

渡部典子

渡部典子

カテゴリー:文化・生活・ホビー
16885 West Bernardo Dr., #104, San Diego, CA 92127
TEL: (858)232-4521 / FAX: (858)485-0107

エミリさんの場合 その1

皆さん、こんにちは。サイコロジストの渡部典子です。
今回から定期的にコラムを書かせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
ここで毎回ご紹介するのは私の経験にもとづいた架空のケースです。
皆様のメンタルヘルス向上のお役に立てばと思っています。

<エミリさんの場合>

心的症状はいろいろな原因で発症しますが、生きる目的が曖昧であるとか、自分の価値判断に自信が無い場合にも起こることがあります。心理カウンセラーはクライアントさんにとって「自分探しの旅」の道連れと言われます。
自分は何がしたいのか、自分にとって何がベストなのかをカウンセリングを通じて探る作業が、「自分探しの旅」というわけです。そして心的症状のある人が人生の目的を見つけることによって、その時点から急に回復される場合があります。


エミリさんもそのような人の一人でした。
アメリカ人の伴侶とサンディエゴに住むようになって7年あまり、長く勤めていたヨーロッパ系の会社をレイオフになり、エミリさんは日々職探しをしていました。その頃のエミリさんは気持ちがふさぐことが多く、食欲も減り不眠気味で、私のところに相談に来られました。カウンセリングを通じて、エミリさんは様々なことに気づきました。過去のつらかった出来事や、難しい人間関係に傷ついて徐々に心の柔軟性が失われました。その結果、自然に生まれるはずの様々な感情が湧かない状態になっていました。ポジティブ、ネガティブにかかわらず無感情、無感動の状態です。


過去の記憶もぼんやりとして、いろいろなことが思い出せないということにも気がつきました。
過去を思い出すとつらすぎるため、ある種の自己防衛です。ずっと仕事はしていたものの、それは必ずしも本当に自分がやりたいと思っていたことではないということもわかりました。長いこと漠然と自分の人生はこれで良いのだろうかと思っていましたが、仕事をしているうちは忙しく、その疑問に焦点を当てることはあまりありませんでした。そんなにやりがいを感じている仕事ではなかったのですが、失ってみるとやはりショックでした。自分を否定されたようで、自信をすっかり失ってしまいました。レイオフになって、今は充分時間が有ります。するとこれからどのように生きて行くのかと考え続けるようになりました。


やってみたいことが浮かんでも、自分の年齢、学歴、英語力などが頭を交錯して到底無理という思いが支配します。
この自分の可能性を否定する思いというのが、人が何かを成し遂げようとする時に一番の障害になります。
この障害を乗り越えることがカウンセリングの焦点になりました。
心に受けた傷の回復や、ネガティブ思考を乗り越えるのに数ヶ月の試行錯誤がありました。
カウンセリングを続けるなかで、エミリさんは自分の苦しかった経験を活かし、人の助けになる職業に付きたいとはっきりと思うようになりました。この決心が付いてからのエミリさんの回復は、とても早いものがありました。最終的には大学に行き看護師になる道を選択されることになり、カウンセリングを終了しました。心理カウンセラーとして「自分探しの旅」をご一緒させていただけるのは大きな喜びです。


次回はエミリさんがどのようにネガティブ思考を克服して、夢の実現への一歩を踏み出されたかをお話したいと思っています。