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日米の年金と国籍

海外年金相談センター 市川俊治

海外年金相談センター 市川俊治

カテゴリー:年金・保険

年金と「戸籍」「住民票」「マイナンバー」

私たちは、日頃の生活の中で戸籍や住民票が常時必要となることはありませんし、海外で生活しているとその必要性に触れる機会は少なくなります。それだけに日頃からその内容、役割を理解しておくことをお勧めします。

 

戸籍は、日本国民の国籍と親族関係を登録公証する唯一の公文書で、社会生活上、なくてはならない重要な役割を担っています。因みに、米国には戸籍はありません。「家」を中心とする日本と、「個人」を中心とする米国との違いなのでしょう。ですからアメリカ市民権の証明は「出生証明」か「帰化証明書」で行われます。

 

戸籍制度は、出生から死亡に至るまでの身分関係を「戸籍」という公文書に登録して、これを公に証明することを目的にしています。戸籍謄本(抄本)は、婚姻・出生の届出や日本国の旅券の発行等の際、身分関係の確認手続きにはなくてはならないものです。

例えば、親の遺産の相続手続きの際に、子供として相続人であることを証明する場合や年金関連では、加給年金の請求手続きの際夫婦関係を証明する場合、又
夫の死亡後、妻が遺族年金の受給者であることを証明する手続きをする場合など戸籍により証明します。

全ての日本国民は、日本国内に居住するか否かにかかわらず、出生、婚姻、死亡といった身分事項を戸籍に登録することになっています。将来の年金申請や遺産相続等に備えるためにもご自身の本籍地、戸籍の筆頭者はどこかに記録しておくことをお勧めします。出来ればご自身の戸籍謄本をコピーでも良いので保持されて置けばいざという場合安心です。

 

海外在住の皆さんが、わざわざ日本の本籍地の市町村役場に届を出さなくても済むよう、領事館では各種届を受け付けています。海外にお住まいの場合、主な届出の提出期限は3ヶ月以内となっていますが、特に「出生届」(出生後3ヶ月以内)、「婚姻に伴う氏の変更届」(結婚後6ヶ月以内)、「離婚に伴う氏の変更届」(離婚後3ヶ月以内)については、それぞれの期限内に届出を行わないと、国籍を失ったり、家庭裁判所の許可が必要になる場合もありますのでご注意下さい。

 

また、戸籍と住民票は全く別のものです。居住地を登録し、地方自治体との関係を明示するのが住民登録制度です。居住地は住民票と関連付けて戸籍の附票に記載されており、居住地の追跡に利用することができます。日本から米国に移住する際、市町村役場に転出届を提出しておけば附票に出国年月日が記載されます。日本の年金手続きの際に、実際に保険料を支払った期間だけでは受給資格の10年を満たさない場合、カラ期間(20歳から60歳まで日本国籍で海外に在住した期間)を加算して10年以上の加入とすることが出来ますが、その際、附表によりカラ期間の証明を簡単にすることができます。

年金と住民票との関連で最近見受けられるのが、国民年金加入無効問題です。
日本国内で国民年金に強制加入されていた方が海外に転出し国民年金に継続加入したい場合、任意加入を選択できます。その場合、日本出国時に住民票がある区市町村の役所の住民課等に国外転出届を提出後、別途国民年金課に行って強制加入から任意加入への変更を届出する必要があります。
国外転出時に強制加入から任意加入への切替えの手続をすることなく国民年金の加入を継続すると、国民年金法第9条2項(日本国内に住所を有しなくなったとき加入資格を喪失する)に基づき国外転出による住民票の除票時に遡り加入資格喪失となってしまいます。この点は注意する必要があります。

 

又、相談が多いのは国民年金の保険料未払いの督促状の相談です。日本出国時に転出届を提出せず渡米すると、出国後も住民票はそのまま残っていることから日本に住んでいるとみなされます。日本在住者は会社に勤務して厚生年金に
加入していない限り、国民年金は強制加入です。そこで国民年金の保険料の未払い分の督促が行われたわけです。また住民票が残されていると国民年金に加えて、国民健康保険料、40歳からは介護保険料の支払い請求が出国時に登録されていた市町村役場から実家などに送られてきますからご注意ください。

 

なお在留届と住民票は連携されていません。日本に住んでいる時は市町村役場に住民登録を行います。米国に移住したら大使館、総領事館に在留届を提出すれば日本の住民登録と同様の効果があると思われがちですが、在留届は残念ながら日本の住民登録とは連携されていませんのでご注意ください。

 

一方、2024年5月27日にマイナンバー法が改正されました。これまでは折角日本でマイナンバーカードを申請取得しても、海外に出国する際に転出届を提出するとカードは無効になってしましたが、今後カードは海外に転出しても失効することなく継続して利用可能となりました。また在外公館でのマイナンバーカードの申請や受け取りも可能となりました。日本年金機構では、マイナンバーを利用することにより、年金相談や照会、各種届出の省略、各種届出時の添付書類の省略等が可能となっています。今後、海外に住む日本人にとり、マイナンバーによる行政手続きの効率化と利便性の向上が期待されます。

米国で安心して海外生活を送るためには、日本と米国の行政のルールを正しく理解しておく必要がありますね。